CAREER TALK
3月26日に、てまり新田薬局で研修中の北陸大学 内手教授と、教授のゼミ生だった宮本薬剤師の対談を実施しました。
内手:宮本くんは粘り強い学生でね。最後まで自分のやるべきことをやっていました。研究は楽ではないんだけど、難しくてもチャレンジを繰り返して、それを持続する力が非常に強い学生でした。だからね、社会人になってから変化があるかと聞かれても、もともとがすごくよかったんだよね。
宮本:嬉しいです。ありがとうございます。
僕から見た先生は、研究の印象が大きいですね。とても研究熱心な先生でした。僕の研究についても沢山議論した思い出があります。
内手:実験はすごい大変だっだよね。結果がわかっているものじゃないから、苦労したよね。
宮本:卒業して良かったという点では、僕は地元で仕事をしたいと思っていたので、同じ大学出身の方と仕事ができたり、違う職場でも北陸大学の卒業生と会ったりして、距離感が近くて良いなと思う機会が多かったので、そこが良かったと思います。
内手:北陸地区だと卒業生多いもんね。
宮本:はい。他にも、在学中は資格取得を目指して皆が6年制一貫の同じステージに立てるところが良いと思います。別の大学では6年制と4+2年制の2つにコースが別れているので、スタートから同じステージに立てて、同じ目標に向かうことができ、安心感があったと思います。
内手:そこが6年一貫コースの良いところだろうね。
内手:薬局で研修をさせてもらいたかった動機はね、医学部の教員は臨床をやりながら学生の教育を行うんだけど、薬学部の教員は自分も含めて、臨床の経験が無い人がいっぱいいるんだよね。そういう人がプロフェッショナリズムとか言って「患者さんの思いを大切にしながら、患者さんに最適で安全で有効な薬物療法を提供するんだよ」と学生に教えているんだよ。だけど僕は患者さんを目の前にしたことがない。なんかリアリティがないじゃない。
そういうリアリティがない自分ってどうなんだろうって思ったんだよね。だから、薬剤師養成の仕事をずっとやっているけど、実際に薬剤師の現場の仕事の経験がないから、経験したいなと思ったのが僕の動機だね。
僕なんかは週に1回2回来て、外来業務、施設調剤などに関わらせてもらっているけど、それって僕の日常のほんの一部でしかないし、もっとやりたいと思っている。薬剤師のプロフェッショナリズムを実感してみたい。
宮本:先生の話を聞いていたら、薬剤師のプロフェッショナリズムについての授業もあったなあって思い出してきました。
内手:そうだね。薬剤師に求められる10の資質のことだよ。卒業時までに身につけておくようにって言われているよね。宮本くんもまた思い出して、実践してみてね。
宮本:はい。
内手:大学の授業の中でも、基礎科目+臨床での考え方を入れていく必要があるのね。国家試験でも、基礎的な知識+それを知っているだけではなく、臨床に結びつけて考えられるような問題が増えてきている。だから国家試験の問題を分析して対応していこうと思ったら、教員自身が臨床のことを知らないと、そういう問題に対応できないと思ったの。そういう訳で、現場で薬剤師の仕事をしたいなと強く思ったんだよね。
国も基礎は分野横断的に、それに臨床の高さをもたせた立体的な問題を多くすると言っているので、教員が対応できるようにならないと、学生が国家試験に合格できなくなるって、僕個人としてそう思うね。
内手:ひなの家彩では、訪問介護、訪問看護、訪問診療などの医療提供システムを見ることができました。それぞれの専門職の方達が、患者様一人一人に手厚くケアをしていて、そういう素晴らしい環境を間近で見させてもらえてとても良かったです。ありがとうございました。彩にいる症状の重い患者様たちは、家族によるケアの負担が大きかったと思うので、病院ではないけど、住宅型有料老人ホームで手厚い在宅医療を受けられて幸せだと思う。
何より施設スタッフが一生懸命仕事されている姿が素晴らしいと思ったね。地域密着という、橋本社長の会社の運営方針に対して、言葉だけではなく、実践して社会に貢献している素晴らしい会社だと思いました。
内手:学生が入学する時って、薬剤師になりたいと思ってほとんど入学しているのよ。どんな薬剤師になりたいか、目指す薬剤師像について宮本くんも作文を書いたじゃない?
宮本:そうですね。「患者様の為になるような薬剤師になりたい」みたいに書きました。
内手:それが学生の動機なのよ。本当の薬剤師になるまでの6年間はすごく長いから、その強い動機が学習する意欲を継続させる力になるのね。患者さんの為になりたい。信頼される薬剤師になりたい。患者さんの健康と命を守る薬剤師になりたいって皆思っているじゃない。6年間過ごして国家試験に合格してやっと夢が叶ったんじゃなくて、そこからが本当の夢の実現なんだよっていう風に思えるようになってきたの。夢が終わったんじゃない。夢のスタート地点に立てたんだって、僕自身が思えるようになった。皆の6年間の学習が終わり薬剤師の免許をもらえて、さあ、ここから本当に信頼される薬剤師になりたいっていうのが始まるんだよっていう思いになれたね。それはね、現場を経験するまではあんまり思っていなかったことなの。どちらかというと、卒業させれば終わりだろって思っていたわけよ。だけど本当に夢だと思っていた、患者さんの為になりたい、信頼される薬剤師になりたいというスタートに立ったんだから頑張れよと。働き始めてからのことを考えてあげれるようになったかな。それが今までの僕との大きな違いだね。
だから生徒が卒業して国家試験に受かるのが、教員のゴールじゃないんだぞって思うね。教員のゴールは学生の生き方を実現させてあげることかな。だからもっと卒業した後のことも、実際にしてあげられることは何もないかもしれないけど、それを支えてあげるのが教員なのかなって思うね。
宮本:話を聞いていると、先生の考え方が大きく変わったんだなって、すごく感じました。
内手:だいぶ変わったのよ。僕自身の考えも。申し訳ないけど、宮本くんが学生の時には思っていなかった考え方だね。とにかく卒業して国家試験に合格すればいいだろうって思っていたから。今年の卒業生の子から、そういう風に思い始めたね。
宮本:そうだったんですか。僕もスタート地点に立てたから、これからが大切ですよね。
内手:そうそう。宮本くんもこれからだよ。4月で3年目だっけ?とりあえず2年間ほど働いてみると、業務の全体像も把握できるようになるし、3年目からはできなかったことも自分でできるようになるしさ。自分はどうしたいのか、自分は何をしたいのか。人生ってけっこう短いから、宮本くんもやりたいことをやれるように一生懸命頑張ろうよ。
宮本:はい。頑張っていきます。ありがとうございます。
内手:宮本くんと話していると、僕の研究室から宮本くんのような素晴らしい卒業生を出せて良かったなと改めて思ったね。研究室の卒業生は、皆薬剤師になって自分の働く場所でちゃんと頑張っているので、そういう生徒を教育できた、今の仕事を誇りに思います。
また、てまり新田薬局で薬剤師業務を一通り経験させてもらって感謝いっぱいです。皆さん優しく教えて頂きありがとうございました。
本当は3月で研修を終えるつもりだったけど、せっかく薬剤師のプロフェッショナリズムが芽生えてきたのに、ここで終わるとそれが消えちゃいそうな気がしたので、継続したいと思い、また土曜日だけ研修に来ることにしました。皆さん今後もよろしくお願いします。
宮本:そうだったんですね。またよろしくお願いします。一緒に頑張りましょう。
僕は今日の対談で、先生から初めての薬局業務で純粋に感じたことなどを聞けて良かったです。自分はまだ新人薬剤師だと思っているので、僕の今後の薬剤師としての在り方に直結するような意見を聞けて、とても刺激的な1日でした。先生がひなの家彩で、高齢者医療を見てきたとういうお話もありましたが、僕も介護施設や自宅療養に薬剤師として関わっているので、先生に共感する点も多かったです。先生との対談で得たことを、また業務に活かそうと思います。今日はありがとうございました。
内手:こちらこそ、ありがとうございました。